第11章 翔太
仕事が終わり、車の中は後ろ席で翔太と2人きり。
気まずい空気が2人を覆う。
お互い何も喋らず、ただ外を眺めていた。
「……翔太、あの薬は何だ?」
「あれは……」
「何で薬物なんかに手を出した。病院から貰った薬は全く飲んでないだろ。」
「病院の薬、効かないんだ。飲んだけど、吐き気と頭痛は治らないし。寧ろモヤモヤする一方で。それであの薬見つけて。初めはダメだって思った。でも、この身体が治るならって思って。」
「それで飲んだのか。」
「ごめん。やめようと思っても止まらなくて。死にたいって思って。」
「……何で俺に言わなかったんだ。親友だろ。」
「そう…だね。」
翔太は俯き膝の上の拳を握りしめていた。
力が入り震えている。
「できなかったんだ。お前と壁ができてる気がして。」
喧嘩してからあまり会話をしなくなっていた事を気にしていたんだろう。
相当顔色が悪い。
「ごめん。もうやめるから。心配しないで。」
翔太はそう約束して家の前で車から降りた。
その背中は前見た時よりもさらに小さくなっていた。
翔太のその背を追いかけようか迷った。
もう会えない……
そんな気がしてならなかった。
けど、その時の俺にはできなかった。
引き止めて何を言うつもりかもわからず、止める勇気もなく……
まだ高校生の俺にはただ見送るしかできなかった。