第11章 翔太
オーディションを受けた事務所に翔太と向かった。
既に3人が来ていた。
この人たちも呼ばれたんだろう。
「こんにちは……」
「どうも……」
小さくお辞儀をしながらぎこちない挨拶を交わす。
俺らと同じくらいの年齢だろう。
「おっ、揃ったね。」
男の人が扉を開けて後ろから入ってきた。
この人が入江さんだろう。
「あの……話って……?」
隣にいた翔太が尋ねる。
「あー。君達のオーディションを見てたんだけど……」
「はい。」
「落ちたんだよね?確か鈴木君は辞退したんだっけ?」
ここにいる全員が不合格だったのか。
「私には君達5人がステージで輝いてる姿が思い浮かんだんだ。そこでだが……この5人でアイドルグループを組んでほしいなと。」
その場にいた全員が驚いた。
もちろん俺も。
そんな理由でアイドルに?
しかもこの5人……
「実は、もう一つ私の事務所ができる予定でね。ここの事務所は別の人に頼んでいるんだ。そっちの看板アイドルとしてデビューしてほしい。どうかな?」
俺ら以外の3人は迷わずに「やらせてください」と答えた。
「君達はどうかな?」
「……俺は……」
翔太が俺の方をチラッと見て迷っていた。
「よく……分からなくて……裕斗はどうなの?」
「……自分で決めろ。ただ、簡単じゃないぞ。学生なんだ。軽い気持ちでやるんだったら止めろ。」
「軽い気持ちって……そんな事ないよ……」
その言葉に傷ついたのか、俯いてしまった。
「やる……俺アイドルやります!」
「……俺はお前の親友だし、側で応援しつづけたい。俺もやる。」
「どんな理由なの?それ。」
「ほっとけないんだよ。正当な理由だろ。」
「全っ然!」
こうして俺ら5人は出会い、共にアイドルとしてやっていくことになった。