第11章 翔太
本番前に控え室でメイクやヘアセットの確認をしている。
瑞希もスタイリストに衣装の確認をしてもらっていた。
「瑞希ー!」
「……」
圭が瑞希を呼ぶが返事をしない。
上の空状態だ。
「?瑞希?」
「っ!あ、ごめんなさい!ボーとしてて!」
「う、うん……」
最近の瑞希はこんな感じだ。
呼んでも聞こえていないみたいで、返事をしない。
こんな状態でライブは無理があるよな。
「瑞希。集中しろ。本番前だ。」
「うん……ごめんなさい……」
この嫌な感じ……
翔太の時以来だ。
ライブは難無く終わったけど、瑞希の歌声がいつもと違った。
いつ聴いても鳥肌の立つような透き通った歌声だったが、声が出しずらそうだった。
本人も気づいているようで、反省していた。
もっと喉のケアに気をつけると言っていた。
翔太の事がさらに蘇る。
これは何か嫌な事が起こる前兆なのか?