第10章 忍び寄る影
「瑞希ー!帰ろうぜ!」
「あ……ごめん……今日は……」
「……あー仕事か?なら安心だな。青山さんが迎えに来てくれるし。」
「……うん。」
こんな風に大輝に嘘をつき続けて4日が経った。
誰かに付けられている感覚は消えなかったけど、特に自分の身に何か起こるわけでも無かったから大丈夫なのかもしれない。
今日は帰って勉強しなきゃ。
明後日はまたライブで東京から出るから暇が無いんだ。
大輝が学校を出て30分くらい経ってから家に帰った。
まただ……
学校を出てすぐからずっと追いかけられている。
それに、今日は妙に近い。
少し早足に歩くと同じ速さで付いて来るのが分かった。
怖い……
そんな思いばかりが脳内をグルグルと駆け巡り、走り出してしまった。
早く離れたい……
家に着きたい……
「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
今までに無いくらい必死に走っている気がする。
暫くすると足音が消えた。
もしかして撒けた?
そう思い後ろを振り向くと誰も居なかった。
やっぱり気のせい……なのかな?
一安心して、前を向き帰ろうと踏み出した。
「っいって!……あ!すみません!」
角を曲がろうとした時、誰かとぶつかった。
僕より身長が高く、ガタイのいい男の人。
「……どうして……逃げるの?」
「え……?」
ゾワッと一瞬で鳥肌が立った。
この人……どこかで……
「っん!?」
口を塞がれてどこかへ連れていかれる。
逃れようと必至に藻掻くけど駄目だ。
助けを求めようと声を出すけど上手く出せないし、そもそもここは人通りが少ない。
「んー!んん!」
暗くて狭い道に辿り着いた。
そこで僕は自由にさせれた。
逃げたかったけど、出来なかった。
恐怖で足が震える。
「瑞希君……恐がらなくていいよ……大丈夫、優しくするから。」
「やだ……誰か……誰か……助けて……」
よく見ると、握手会に来ていた男性だった。
「声出したら……親友の大輝君、どうなるか……分かるね?」
「ひっ……」
「君が悪いんだよ……逃げたりするから。」
「ごめんな……さ……おねが……いします……」