第9章 僕の好きな人は……
瑞希side
肉体的にも精神的にも疲れ、すぐに部屋に向かった。
もうすぐ12時を回る。
皆眠っているのか、凄く静かだ。
「おかえり。」
声をかけてきたのは裕斗君。
「……ただいまです。」
日本語が変になる。
「遅かったな。何かあったのか?」
「まぁ……少しミスしてしまって。」
早く部屋に入りたい……
「演技か?」
「……はい……五十嵐さん……尚哉君に迷惑かけてしまって。」
「……手伝ってやろうか?」
「遠慮します。」
駄目だ、ちゃんと断らないと……
というかあんな事あったのに普通に話せる裕斗君が凄い。
裕斗君が溜息をついて、僕の腕を掴んだ。
そして、裕斗君の部屋に引き連れられた。
扉の鍵まで締められる。
「ちょっと……何ですか?!」
「瑞希、今まで通りに接してくれないか?気まずいのは分かるが……お前への気持ちは変わらないから、普通に接して欲しい。」
「わ、分かりました……部屋出してくれません?」
裕斗君にそう頼んだけど、何も応えてくれない。
「演技練習、手伝うからどんなシーンか教えろ。」
「いや、だからいいですって!////」
「協力したいんだよ。そこまで思いつめた顔されてたらほっとける訳がねぇだろ。それに、周りにも更に迷惑かけるんじゃねぇのか?」
うぅ……そうだけど……
それは嫌だけど……
あのシーンは……
僕はどうしたらいいか分からなくて黙り込んでしまった。
「瑞希、使えるものは使え。お前の周りには協力してくれる奴が沢山いるだろ。上手く人と付き合っていかねぇとそのうち壊れるぞ。」
「……分かりました。お願いします。」
裕斗君の言葉に何も返すことが出来ず、結局断れなかった。