第9章 僕の好きな人は……
瑞希side
ベッドの横で五十嵐さんの前に立ち肩に両手を乗せる。
僕より身長が高くて少し上の方になる。
五十嵐さんは僕の顔を両手で包み込む。
大きな手……裕斗君を思い出す。
この状態から撮影スタートで、初めはリハ。
今からこの人とキスするんだ……
カッコよくて、人気者の五十嵐さんと。
そう思うと緊張とは違うドキドキ感が込み上げてきた。
「よーい、はいっ!」
スタートの合図と共に、五十嵐さんが僕に唇を重ねた。
うわぁ……凄い……舌まで……
というかスタッフさんが見てる中恥ずかしい……
そんな事を考えながらベッドに押し倒される。
ゴンッ!
「いっ!!」
「うわ!ごめん!!(汗)」
位置間違えてベッドの頭部分の柵の所で後頭部を打った。
「カット!!瑞希君大丈夫!?怪我してない!?」
「だ、大丈夫です。もう1回お願いします。」
五十嵐さんと位置確認をして、もう1度実践してみた。
上手くいき、そのまま続ける事になった。
ほんとにどうしよ……わかんない……
五十嵐さんは僕の衣装を上手に脱がしていく。
僕は頭の中が真っ白になり、何も考える事が出来なかった。
「カ、カット!!」
スタッフさんの声で意識がハッキリした。
「瑞希君!?本当に大丈夫!?今真顔だったよ!?」
「すみません!」
目の前にある五十嵐の顔を見て謝った。
だって僕のせいでこんな所何回もしたくないよね。
「俺はいいよ。瑞希君、セックスした事ないの?(笑)」
「へ!?////」
した事はありますけど!!?
相手は男ですけど!?
「声出しなよ。しかもあんな真顔でされたらちょっと……普通は顔歪むでしょ(笑)」
「そ、そうですよね……やってみます!」
声って……喘ぎ声?
どうしたら……
結局、なかなか上手くいかず別の日に撮ることになった。
五十嵐さんはフォローしてくれてるけど……
申し訳ない……
迷惑なはずなのに。