第9章 僕の好きな人は……
裕斗side
怖い……
恋人にそんな事を言われた。
俺が?
隙を付いて瑞希が俺の下から這い出た。
そして、赤くなった腕を押さえながら涙を流す。
俺、あんなになるまで力入れてたのか……
「……バレそうになったって……本当か?」
「そんな事……嘘つかないよ。」
本当にもう無理なのか?
メンバーにバレそうになって、恋人には怖いと言われ……泣かせてしまった。
「……すまん。……腕、痛いよな。」
赤くなった所を見ようと俺が手を伸ばすと、瑞希は肩をビクっとさせた。
「触らないでください……」
敬語で返された。
あぁ……もう無理なのか。
確信した。
「少し……時間をください。考え直したいので。」
そう言って腕を押さえたまま立ち上がり出ていった。
考え直す……
その結果俺らの関係が続く可能性は……
ゼロに近い。
終わったな。
俺が五十嵐に嫉妬して、酒なんか飲まなければこんな事にはならなかったかもしれない。
全部俺が悪い。
まただ……
また大切な人を失っていく……
そんな自分に嫌気がさした。
人生、どうしてこんなに上手くいかない……
失敗を繰り返すのはしたくない……