第9章 僕の好きな人は……
瑞希side
「はぁ……はぁ……」
どうしてもついていけない……
最近忙しくてランニング出来てないから体力まで落ちてきた。
もう1回!
曲をかけようと手を伸ばすと、裕斗君が腕を掴んできた。
「な、なに!?」
「はぁ……少し休め……顔色悪いぞ。」
裕斗君が少し息を切らしながら止めた。
「うん……」
そんなに顔色悪いかな……
確かにちょっと眠いけど。
というか……
「裕斗君……腕痛い。」
「……」
何も言わないでただ僕を見つめてる。
寂しそうな目で。
力はどんどん強くなってきた。
「い、痛いっ!裕斗君っ!」
「瑞希……教えてくれ……」
何を!?
「何で怒ってるのか……考えたけど分からなくて……」
「っ!」
「俺、お前と別れたくないんだ。」
腕を引かれ強く抱きしめられる。
「……バレそうになったんだ。裕斗君との事。」
僕が呟くと裕斗君は驚いた。
けど、抱きしめたまま離さなかった。
それを無理矢理引き離し、しっかり向き合って話す。
「裕斗君が僕にキスしようとしてきて……止めたからギリギリ見られなかったけど。真広君がね……というか隼也君から聞いたらしいけど、最近僕らの距離が近いって。タメ口で話すのも聞こえたらしくて。……もう無理なのかな。」
「そんな事ない!」
裕斗君がまた逃げようとする僕の手を強く掴む。
さっきより痛い。
「いっ!痛いよっ!離して!」
引き剥がそうとして暴れると裕斗君がそのまま僕を押し倒してきた。
「離さない……絶対離れない……」
「……僕、裕斗君の事優しくてカッコよくて、でも時々可愛い所もあって……好きだよ。でも……」
涙が込み上げてきた。
さっき掴まれてた所がジンジンと痛む。
「裕斗君、怖いよ。僕、裕斗君が怖い。」
その言葉を聞いて裕斗君の目が見開いた。
力が一瞬にして緩み、隙ができた。