第9章 僕の好きな人は……
裕斗side
「お疲れ様でーす。」
「裕斗君♪」
五十嵐尚哉が後ろから抱きついてきた。
「なんですか?……気持ち悪いから離れてください。」
「えー……酷いなぁ……」
嫌々離れながら俺に向き直る。
「今日ご飯行こう!昨日は駄目だったけど今日はいいでしょ?」
昨日の瑞希の言葉を思い出した。
「……分かりました。1時間だけ。」
「うっし!」
近くの居酒屋に来た。
2人だけかと思ってたが、他の共演者も来た。
大人数は苦手だな……
「あれ?裕斗君飲んでないね。」
「禁酒してるんで。」
瑞希に酒は飲むなと止められた。
酔うと本音が出てしまうためだろう。
思わずポロっと瑞希との事を話してしまったら終わりだ。
「えー、つまんないの……」
「ずっと気になってたんですけど、その『つまらない』ってなんですか……」
「面白く無いってこと。裕斗君さ、全然ノってくれないじゃん。」
めんどくさ。
「けど、瑞希君との映画撮影は楽しみだなぁ。」
「っ!?」
「ん?なに?」
「い、いえ……」
前にドラマを見ながら『この五十嵐尚哉って俳優さんカッコイイですね!』って隼也と話してた。
「あー!そっか!同じグループだもんね!」
「はい。」
「瀬田瑞希くん……いい子だよねー。高校生なのに頑張るよね。俺は無理だな。」
「……どんな役なんですか?」
「恋人同士。」
「ブーっ!!」
驚いてお茶を吹き出してしまった。
「わぁ!!(笑)」
恋人同士……って……
嘘だろ……
それって……
「キスシーンがあるんだ!それにね、ベッドシーンも!あんな可愛い子を押し倒すとか……出来ないよぉ(笑)」
「……へー……そうなんですね。」
どんな映画だよ。
てか、瑞希が……コイツと……
演技だと分かっててもムシャクシャする。
「瑞希君、生で見ると破壊力強そうだなぁ。絶対顔小さくて可愛い!」
瑞希は確かに顔が小さくて可愛い。
けど身長も小さいんだよ。
お前より俺の方が瑞希の事何でも知ってるんだよ。