第8章 恋人らしい事
「そうだな、悪くはないけど良くはない。中の下って所だな。」
「それ悪いじゃん!」
「マシな方だよ、久しぶりにしては(笑)」
大輝が僕の後ろに来て肩を掴む。
「まずは肩の力を抜け。力みすぎだ。そのせいでリズムが時々ズレてる。周りはお前のリズムに合わせて演奏する。瑞希は歌上手いからリズムは取れるはずだ。落ち着いて力を抜けば大丈夫だろう。俺がやってみるから見てろ。」
「うん。」
僕は大輝と入れ替わり前に座る。
大輝は目を瞑り大きく息を吸う。
そして、ゆっくりと呼吸を整えて目を開いた。
それと同時にドラムを叩き始める。
前回聞いたのよりかなり違う。
身体全身がビリビリ感じる。
何だろう……
凄く鳥肌が立つ。
そして、凄く楽しそう。
久しぶりに見る光景に驚きを隠せず、大輝から目が離せなかった。
「ふぅ……こんな感じ。」
リズムが一切乱れなかった。
心の中で歌ってみたけど歌いやすかった。
「すごい……カッコイイよ!大輝!僕も大輝みたいになれるかな?!」
「……どうだろうな。けど、努力すれば必ずなれるだろうよ。俺はまだまだだけどな。」
あんなに上手なのにまだまだなんて……
どれだけ練習しているんだろう。
「そう言えばさ、ストレス発散で叩いてるとか言ってたけど、大輝ってそんなにストレス溜まるの?あんまり感じないけど。」
「ストレスくらい溜まるよ。高校生だし。」
「……どんな事で溜まるの?」
「最近は……恋愛が上手くいかなくてとかかな。どんなに思いを伝えようとしても俺小心者で出来ねぇんだよ。嫌われたらどうしようとか。そんな自分にイライラしてストレス溜まるかな。」
「相談してくれればいいのに……」
「……出来ねぇからこうやって叩いてるんだよ。」
「何で?」
「……さぁな。……そのうち分かるだろうよ。俺の小心者が治れば。」
「……?」
大輝の言ってることが分からない。
珍しく、僕に隠し事してるような感じがする。