第8章 船出の時
「おい。」
聞き覚えのある声にゆっくりと視線を移す
ローの姿に我慢していた感情が込み上げた
「お前、荷物はどうした。」
手ぶらで出て来たにローが言う
しかしの耳には届かない
様子がおかしいに気付いたのかローはジッとを見つめた
「…わたし、やっぱり怖いです。
何を信じればいいのか…
それに、こんなに明るい世界では
わたしの汚れた身体が、、、」
そう言いかけたとき
「お前はもう俺のもんだ。」
ローはそう言うとの側へ歩み寄り肩を抱いた
「行くぞ。」
淡々とした言葉
しかし、を支えるように肩を抱く腕は力強くとても暖かいものだった
不安、恐怖、、孤独、、、
すぐ後ろからついて来て、ソレはいつでもわたしを吞み込もうと狙っている
「。」
呼ばれた名前にハッとする
そうだ、この名前を初めて褒めてくれた人…
わたしはエースを探すって決めたんだ
でも、
「…………………」
は自分を支えるローの腕にそっと触れてみた
今は、この力強い腕について行けば
わたしはわたしでいられるのかも知れない
は震える手でローの身体に捕まると
支えられながらローと共に歩き出した