第8章 船出の時
階段を駆け下りたところで
「‼︎」
背後から呼び止められた
振り返るとそこには店主の姿
「もう行くのか。」
「え?」
思いもしなかった言葉には驚く
何故出て行く事を知っているのだろうか
店主はの表情からまるでそれを読み取ったかのように口を開く
「昨日、トラファルガーから全て聞いた。
だがお前はウチのNo.1、稼ぎ頭だ。
そう簡単には渡せねぇと言ってやったよ。」
(…ローさんが。)
「そこでお前との約束の事を話したら今朝これを持って来やがった。」
店主はそう言うと分厚い札束をに見せる
「ここに二千万ベリーある。」
「に、二千万ベリー‼︎?」
「あぁ。お前の肩代わりに用意した一千万ベリーと
お前を連れて行く手付金だとよ!」
ニヤリと汚い笑みで店主は札束に頬ずりした
「お前を出すのは惜しいが…
これだけ金を貰えれば充分だ、今日からトラファルガーに沢山可愛がってもらえよ?
いいご主人様が見つかって良かったなぁー。」
(この男にとってわたしは所詮お金を稼ぐ為の道具に過ぎなかったんだ…)
最後の最後まで金に汚いこの男に心底腹が立つと同時に惨めな自分に吐き気がする
そして自分は幼い頃この男に助けられたのかと思うと自分の命がとても価値のないものに思えてしまった
「そう言えばこんな事も言われたな…
『今後どんな事があってもに関わるな
てめェとの関係はこの金をてめェが受け取った今解消された
もし関わるような事があれば契約違反と判断し…
お前を殺す』
よほどお前を気に入ったようだぞ?
二度と関わらねぇから安心しろとご主人様に言っといてくれ!
あっ!捨てられたらいつでも帰って来い。
またここで働かせてやるから。へへへ。」
店主はそう言って奥の部屋へと姿を消した
「………」
一度に沢山の事がありすぎては何も考えられない
視界はボヤけ、ふらふらした足取りで外へ出る
眩しすぎる太陽が影で生きて来た自分には明るすぎて不安になり
外へ出るという事が怖くなった…