第2章 第1話
『ここじゃなんですから、私の家に来ませんか?』
優愛さんからそんなことを書いて渡されたのは、俺が手を掴んでから少し経った時のことだった。
「あっ、じゃあ…お邪魔します」
申し訳ないと思いつつも、少し嬉しかったのだと思う。
…なんていう回想はやめた
『着きましたよ』
という紙を差し出されたからだ。
着いたのは、小さなアパート
汚くもなければ、そんなに綺麗でもない、普通のアパートだった
…そういえば
「ご家族の方は?俺入っちゃって大丈夫だった?」
着いてから言うのもあれだな……
と心の中で苦笑を浮かべると、
優愛さんの目が、一瞬、冷えたような気がした
でもすぐに元の表情に戻って、
ふるふると首を横に振った
そして、どうぞ、とでも言っているかのように
ドアを開け、左手で奥を示した
お邪魔します、と靴を脱ぎ、揃え、静かに足をついた
すると突然、とんとん、と肩を叩かれた
『適当に座ってください、飲み物を取って来ます』
「うん、わかった、ごめんねわざわざ。
ありがとう」
一瞬しか見えなかったからなんとも言えないけど、
また、瞳が揺らいだ気がした