第2章 第1話
「……嫌だったら、無理に言わなくてもいいんだけど……」
お茶を置いたあと、何から話せばいいのかわからない沈黙を破ったのは壮馬さんだった。
私は壮馬さんの目を見て頷いた。
「声が…出ないの?」
これはどう言い訳をするでもなく、素直に頷いた。
「それは、どうして……?」
………どうして?
「………」
ほんと、どうして何だろう
そういえば、最後に声を出せたのはいつだったっけ
…確か中学2年のときだったっけ?
それまでは、普通に喋れていたはず。
それまでは、普通に歌えていたはず。
それまでは、想いを口に出せていたはず。
「どうして」なんて、もう昔から何回も聞いてる。
なんで、なんでって。
『それはまだお答えできません』
そう書いて渡した。
「そっか…、ねぇ…」
「?」
急に悲しそうな声色で聞いてきた。
そして、いつの間にか私と会い向かいにいたはずの壮馬さんは隣に来ていた。
「なんで、ずっと笑ってるの?」
「……っ」
「…ね、俺さ、まだ今日会ったばっかだし、こんなこと言うのもあれだと思うんだけど」
悲しそうな声色かと思えば、すぐに優しい声色になったから、びっくりしてしまって、壮馬さんの顔を見た。
すると、意外に近い距離で、鼻の先と先がくっつきそうだった。
けど壮馬さんはそんな事も気にならないくらい真剣で、真っ直ぐな瞳をしていて、でも優しい顔をしていて。
私は、そんな壮馬さんに目が離せなかった。
「俺を頼ってよ」
閉じかけていた何がが、
壊れて、破裂して、
溢れ出しそうな感じがした。
それはとても甘く、酸っぱく、ほろ苦い。