第3章 第2話
『本当に、私って生きてる意味がない』
『高校3年、相変わらずいじめられているけれど、受験生になったからか、前よりかは軽くなってきた』
『声も出ないし、体力もないし、絵が好きだったから、美術系の大学に入ろう。…どうせそれしか、できることないし』
真っ黒な世界に、真っ白な文字
俺はただただ重くなってきた足を引きずって歩いていた
彼女のこんな心に触れるのは初めてで、どうしたらいいのかわからない
鬱々としたこの世界では、なにをすればいいのだろう
俺の心まで黒くなってきたその時だった
ふわり、桜の花びらが横切る
花びらが行った方へ向くと、
真っ白な背景、少し緑味のある黒い文字が浮かぶ
『今日は私の特別な日。何だか外に出なきゃと突然思って、桜並木のある所へ行った。
斉藤壮馬さん。
私は、生まれて初めて、"春"をみつけた』
ふわり、ふわり、また桜の花びらが「こっち、こっち」と言っているかのように俺を導く
『最近の私、とても楽しい。
声が戻って欲しいなんて強く願ったのはいつぶりだろう』
『壮馬さん、今日は何だか疲れていた。こんな時、私はどうしたらいいのかわからないから、はちみつレモンの飴をあげた。
そしたら、"ありがとう"って、私の心を溶かすような笑顔になった。』
だんだんと、文字が色付きだした
俺は、たまらなく泣きそうになった
『壮馬くん。壮馬くんに会って、私の世界は色付きだした。あなたの声で、私は救われた。私もあなたに、何かあげられたらいいのに。』
…ああ、抱き締めたい
今すぐ、君に会いたい
目が覚めたら、「がんばったね」って、とびきりの愛情を注いで
俺は、目の前の桜の花びらに口づけをして、
小さいけど、確かな光を、注いであげた