• テキストサイズ

透明な声に、色彩を

第3章 第2話




『本当に、私って生きてる意味がない』

『高校3年、相変わらずいじめられているけれど、受験生になったからか、前よりかは軽くなってきた』

『声も出ないし、体力もないし、絵が好きだったから、美術系の大学に入ろう。…どうせそれしか、できることないし』








真っ黒な世界に、真っ白な文字


俺はただただ重くなってきた足を引きずって歩いていた









彼女のこんな心に触れるのは初めてで、どうしたらいいのかわからない


鬱々としたこの世界では、なにをすればいいのだろう








俺の心まで黒くなってきたその時だった









ふわり、桜の花びらが横切る






花びらが行った方へ向くと、
真っ白な背景、少し緑味のある黒い文字が浮かぶ











『今日は私の特別な日。何だか外に出なきゃと突然思って、桜並木のある所へ行った。



















斉藤壮馬さん。


私は、生まれて初めて、"春"をみつけた』







ふわり、ふわり、また桜の花びらが「こっち、こっち」と言っているかのように俺を導く












『最近の私、とても楽しい。
声が戻って欲しいなんて強く願ったのはいつぶりだろう』




『壮馬さん、今日は何だか疲れていた。こんな時、私はどうしたらいいのかわからないから、はちみつレモンの飴をあげた。
そしたら、"ありがとう"って、私の心を溶かすような笑顔になった。』



















だんだんと、文字が色付きだした


俺は、たまらなく泣きそうになった







『壮馬くん。壮馬くんに会って、私の世界は色付きだした。あなたの声で、私は救われた。私もあなたに、何かあげられたらいいのに。』














…ああ、抱き締めたい


今すぐ、君に会いたい



目が覚めたら、「がんばったね」って、とびきりの愛情を注いで




























俺は、目の前の桜の花びらに口づけをして、





小さいけど、確かな光を、注いであげた



























/ 49ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp