第2章 第1話
振り向くと、
可愛らしい顔つきの男性だった
目は真っ直ぐこちらを捉えながらも、
その姿勢は、どこか緊張しているようだった。
「えっと…?」
なかなか返事をしない私を見て、さっきよりも焦っているように見えた。
彼の左手から、薄い、黄緑色の小さなメモ帳をそっと取り出した
右利きの為、メモ帳は左手で取った。
「………っ」
『ありがとう』
たった5文字
たったの5文字でさえも言えない。
言おうとしても、空気が震えるだけ。
そんな私を不思議に思ったのか、
目の前の彼はさっきの緊張はどこへ行ったのか、
心底心配をしているように、
「大丈夫ですか?
…あ、どこか具合が…⁉︎」
私の顔を覗き込んだ
これはいけない、と
すぐにシャーペンを取り出し、
すらすらと、丁寧に、気持ちを込めて書いた。
『心配をかけてすみません。
メモ帳、拾ってくれてありがとうございました。』
その紙をちぎり、彼の瞳を見つめ、
渡した