第2章 第1話
ーー今日でもう、19歳かぁ……
長いようで、短かったな
桜並木の下で、いつものように
J-POPを聴きながら
ゆっくり、ゆっくりと歩いていた。
暖かい風は、まるで私のことを包んでいるようだ
まるで、弱音を吐きなさい、とでも言っているかのように
辺りを美しく色取る桜の花びらは、私をどこかへ導くように
ひらひら、はらはら…と、優しく舞っていく
この優しい雰囲気を忘れないように、
いつものようにメモ帳に
絵やら感じ取ったことやらを書こうとして、小さなバッグの中に手を入れて探す
「………?」
………ない
「………⁉︎」
嘘っ…あれがないと……!
軽くパニックを起こしていると、「あの…」と
声をかけられた
「……」
優しく、透き通った、落ち着いた声が、
私の頭の中に響いた
「これを…探してますか…?」