第2章 第1話
チャイムが鳴ると、すぐに門へと駆け出す
壮馬さんだったら、もしかしたら待っているんじゃないかって。
壮馬さんだったら、壮馬さんだったら…って。
ーー必死になって門へと着くと、
「……っ」
ただただ、桜が散っているだけだった
ーそうだよね、迎えに来て欲しいと頼んでもいなければ、そういう間柄でもないしね。
ただ期待してた私、なんか馬鹿みたい
壮馬さんにしか頼れないことが惨めに思えてくる
ーー帰ろう
空は少しオレンジ掛かってる
ー綺麗
とてと綺麗で、でも暖かくて、まるで壮馬さんみたいだ。
ふと思いつき、近くのベンチに座り、スケッチブックを広げる。
私のことを見てくれる瞳は暖かくて、それでいて包み込んでくれて、
風になびくその柔らかそうで、繊細そうな髪は爽やかで、
私のことを呼んだり、私を安心させてくれる声を出すその唇は少し厚くて、可愛らしく、色っぽくてーー
「……俺描いてるの?」
そうそう、そんな声ーー
「!!??」
私のすぐ上から聞こえた、今描いてる人物の声を聞き、びっくりしてしまい、咄嗟に上を向く。
ーー少しでも動いてしまえば、唇と唇が触れてしまう距離ーー
一瞬、時が止まった様だった
桜の花弁が止まっているようにも思えた
それでも尚思ったことといえば、
ーーあぁ、美しい
そんな、時が止まっているようにも思えたのは、きっと目の前にいる、壮馬さんがあまりにも美しかったせいだ。