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透明な声に、色彩を

第2章 第1話




大学へと行く途中、壮馬さんが他愛のない話をたくさんしてくれたおかげで、いつもより早く大学に着いた気がした。



「じゃあ俺は仕事だから。頑張ってね!」

『壮馬さんも』

そう書いて渡すと、柔らかく微笑んで、ありがとう。と言って背を向けて歩いていった。




久しぶりに、人のあたたかさに触れた気がする。

さっき壮馬さんから連絡先を教えてもらったし……
ああ、にやけそうだ




今日も1日頑張ろう、と意気込み、中に入っていくのだった。











壮馬side



「よろしくお願いします」


今日は新しく始まるアニメの収録日

監督さんなどに挨拶を済ませ、座って待っていると、


「よろしくお願いしまーす」

元気に通る声で入ってきたのは、俺の友達でもある石川界人だった


「界人君おはよう。朝からいい声だね」

「おはよう壮馬くん!いやあ、今日朝からいいことがあってさ」

「へえ」

「新しいプロテインが…」

「俺そーいえば昨日誕生日だったんだよねー」


いや、話聞けよ!と鋭いツッコミをいれながらもプレゼントを渡してくるあたり本当に優しいよね。


「壮馬くん昨日なんかいい事あったん」

「え」

「昨日花江さんからメールきたんだよね。『壮馬にもとうとう春が!』って。てかもともと今春だよ!っつーね」

「なっちゃん…!」



なんで言っちゃうかな、あの人は!

心の中でそう叫び、界人君には話そうと向き直った。


「…界人君、俺ね」

「え?うん」

「………」

「………」

「好きな人が出来たんだよね」

「まじか」



真顔でまじかって言われた。


「おめでとう」


真顔でおめでとうって言われた。


「ありがとう」


真顔でありがとうって言ってやった。





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