第2章 第1話
ぼんやりと、目の前に入ってきたのは大の字で寝てる拓也さん。
カチャカチャと食器の音。
そして、とてもいいコーヒーの香り。
…食器の音?
…コーヒー?
ばっ!と勢いよく起きて、キッチンを見ると、俺に気づいたようで早足に近寄ってくる嫁……じゃなかった、優愛さん。
『おはようございます。ごめんなさい、勝手に借りちゃいました。』
「…ん、おはよう。それは全然いいんだけど…、
ごめんね、俺の家なのに準備させて…」
すると勢いよく首を横に振り、紙を見せた。
『昨日、初対面にも関わらず、こんなに良くしていただいたので、私に何か出来ることはないかと思って自分でやったんです!!
謝らないでください!!』
すごい気迫で紙を見せる彼女に、思わず笑ってしまう。
「優愛…」
「!?」
「…って、呼んでいいかな?」
真っ直ぐに俺を見る瞳は潤み、
少し顔も赤くなっている。
ああ、本当に可愛い。
好き。
『じゃあ私も、壮馬くんって呼びます!』
「そこは呼び捨てじゃないのね」
クスリと笑うと、優愛は慌てて紙に書いて、見せる。
『年上の方に呼び捨てはちょっと…』
「うん、まぁそうだよね。…よし、じゃあご飯食べて行こっか!」
はい!と言っているかのように、花を咲かせたような笑顔で頷いた。