• テキストサイズ

透明な声に、色彩を

第2章 第1話


梅原side


「優愛さんはさ、壮馬くんといつ会ったの?」

あまりアルコールの強くないお酒を少しずつ飲みながら、優愛さんと、壮馬くんのお気に入りだという緑色のソファに座り、話していた
花江くんはもちろん爆睡だったが、江口さんが寝てしまったのは想定外なことだった

サラサラとペンを走らせ、俺に見せる

『今日です』
「えっ、今日?」

普段はあまり表情が変わらないほうだが、さすがにそれを聞いた時は目を丸くさせた
今日会ったのに…とそこまで考えて脳裏をよぎったのは、先ほどの2人のキスシーンだった

2人は見られていないのだと思っていたのだろうが、実際俺は見えていた。江口さんには見えていなかったが、俺がちらちらとそちらのほうを見ていたのが気になったのか、2人のキスシーンを見てしまい、あんなことになったのだ。
2人とも、ごめん。と心の中で謝ったのを覚えている


「…好きなの?壮馬くんのこと」

優しく、問いかけた

すると、目の前の彼女は頬を桜色に染め、こくりとゆっくり頷いた

「……っ!」

初めて会った時も思ったことだが、彼女はとても可愛らしい。
可愛いだけでなく、美しい。
澄んでいるんだ、彼女の周りの空気が。
だから、頬を染めてもいやらしくは思わないのだ。

何も言わない俺を不思議に思ったのか、顔を赤らめたまま、首を傾げた

艶やかな黒髪が揺れる。
潤んだ瞳は男を誘っているように見えるが、彼女の澄んだ空気が相手を不快に思わせない。


「……ああ、ごめんね、気にしないで。」


くすり、と柔らかく微笑んだ彼女は、大げさだろうが、天使のようだった

この子は、世界の汚れを知らないのだろうか。
それとも、知っていて前を向いているからこそ美しく見えるのだろうか




「優愛さんの……、いや、なんでもないよ」



俺は一瞬、何を聞こうとした?




『優愛さんの声を聞いてみたい』


なんて





そんなの、彼女を傷つけるだけだろうに








『大丈夫ですよ』





見透かされたような瞳で見つめられ、俺は一瞬うごけなくなった




その微笑みが、あまりにも美しくて。







ーー君が最初に出会ってたのが俺だったら、君は、俺に落ちてくれただろうか








からん、と氷の音がした








/ 49ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp