第2章 第1話
着いたのは、どこにでもあるようなマンションだった
「俺の家だよ」
と言いながらエレベーターに一緒に乗る
沈黙
ちら、と壮馬さんを見ると、壮馬さんも私を見ていたのか一瞬目があった。でもすぐに2人で目をそらしてしまった。
…もどかしい距離
そういえば、今日会ったばかりなのにすぐに打ち解けてしまった気がする。
声が出ない私なんかに、こんなに優しくしてくれる人は今までにいただろうか
こんなに優しい笑みをしてくれる人はいただろうか
そう思ったら、急に壮馬さんと話したくなった。
近づきたくなった。
「……っーー!…」
頑張っても、声は出ない。
いつもと同じ、透明な色
今まで声が出なかったことに対してなんとも思ってなかった。あろうことか、安堵したことさえあった。
なのに、いまさら…
「…っ」
もう一度、声に色をつけたい、なんて
ぽん……
「…あ、着いた」
壮馬さんはそう言ってまた私に手を差し出した
私は躊躇いながらも手を重ねた
壮馬さんはもう当然のことのように私の手を握って歩き出した
たったそれだけのことなのに、胸があたたかくなった
「えっと、そろそろ話すね」
歩きながら、やっと説明をしだした
「さっきさ、俺電話してたでしょ?で、今日俺が誕生日だってことで、事務所の先輩とか、友達とかがお祝いに来てくれたらしくて…」
眉をさげ、困っているようだけど楽しそうに、嬉しそうに喋る壮馬さん。
そんな壮馬さんを見るだけで、私も嬉しくなった
「優愛さんも今日誕生日だから、一緒にお祝いしようと思ってさ。…優愛さん、それ言ったら『大丈夫です』って言って来ないだろうから言わなかったんだ」
強引でごめんね、と苦笑しながら私を見る
私は嬉しくて、全力で首を横に振った
そしたら、壮馬さんに笑われた
「あ、もうちょいで着くよ」
うるさい人たちだけど、みんないい人だから安心してね、と優しい笑みで言った