第9章 でっかい風呂って暖まるよね。
ビルの中腹辺り。
誰にも会うことなく部屋にたどり着いた。
勘九郎「ここが僕の部屋っス。」
ガチャリと部屋を開くとスイートルームの様に広々とした部屋にリビングキッチンに別部屋に引き戸に隔たれた大きなベッドが置いてあった。
勘九郎が帽子をフックに掛けながら話す。
勘九郎「因みに風呂は大浴場だけっスから。入りたい時はここから1階下に降りた場所っス。エレベーター降りてすぐ。で、タオルはそこ。」
指をさす勘九郎の先には綺麗に畳まれたタオルが棚に入れられていた。
理奈「じゃあまず入ってくる~。」
手前にあるタオルを適当に2・3枚取るとソファに腰を降ろした勘九郎が声を掛ける。
勘九郎「部屋。間違えないで戻ってくるんスよ。両隣も前も狼だらけっスから。」
理奈「了解。」
面倒だった理奈はさらりと聞き流し適当に相づちを打つと部屋を後にした。
理奈「えっと・・・。」
下に行くとすぐに入口を見つけたが真ん中に四角く『女』の文字がある為どちらに入れば良いのか分からない。だからといって聞きに戻るのも面倒だ。
中からは両方とも人の気配は全くしない。
理奈「・・誰も来ないでしょ」
どこからともなく沸いてきた自信で左に入る事にした。
理奈「・・・すごっ。広っ。ホテル?」
脱衣場すらだだっ広い。
洗濯機まで完備してある。
理奈「洗濯してる間に入ろ。」
着ていた服を全部洗濯機に放り込みいそいそと浴場に向かえば大きな風呂が待っていた。
理奈「無駄に広い。」
ぽつんと一人で背中を流す。
風呂に浸かっていると次なる欲求が沸いてくる。
理奈(・・・眠たい。)
うとうととし始め、自分で危機を感じ脱衣場へと戻る。だいぶ浸かって寝ていたのか逆上せ気味だ。
理奈「・・・間違えた。」
持ってきたのは全てフェイスタオル。
しかも洗濯物はまだ廻っており乾燥モードにすら程遠い。
一応身体は拭いたが着るものがなくては外へも出られない。
幸い女風呂。裸を見られても襲われることもない。
あまりの疲れに籐で出来た長椅子にフェイスタオルに挟まれる様にしながら横に寝転がった。
理奈「・あっつ。・・眠。」
そう呟くと深い眠りに落ちていった。