第9章 乱離骨灰【ラリコハイ】
今、俺の胸では顔を埋めたが熱い吐息を漏らし、そして俺の背中にはと信長様、四本の腕が回されている。
一体、これは……………
「離さぬぞ。」
低く穏やかに聞こえた信長様の声に、俺の鼓動が一つ大きく鳴る。
の中に一物を埋め込んでいるにも関わらず、信長様の表情は悦楽に歪む事も無く僅かに苦し気だった。
「生涯、俺の傍らに居ろ。
最後の最期迄……俺と共に在れ。」
背中に添えられた信長様の大きな掌の温もりを感じれば、その言葉はにだけ紡がれた物では無いことが分かる。
己の胸に抱えた最愛の女を含め、丸ごとを包み込んでくれる崇敬する主君。
腹の底から湧き上がって来る感情に喉が詰まり、鼻の奥が痛んだ。
何だ、この現象は?
初めて経験する感覚に戸惑いながらも、それは決して不快では無く………
いや、これこそが俺に与えられた最上の僥倖なのだと気付く。
これから先、何があろうとも、この主君の為に全身全霊で微衷を尽くそうと固く決意し……
俺は無言のまま震える瞼を伏せた。