第9章 乱離骨灰【ラリコハイ】
「?
其所が寂しいのか?」
敬畏の念で二人の目合いを見つめていた俺は信長様の声で我に返り視線を落として見れば、はまるで母親の乳に吸い付く赤児の様に自分の親指を吸っている。
愛らしい仕草であるにも関わらず、微かに聞こえるちゅ…ちゅ…という音が俺の劣情を煽った。
「辛抱する事は無いぞ、。
今宵は貴様の為の一物をもう一本、用意してあるのだからな。」
心臓が跳ね上がり、背筋をぞわぞわとした感覚が駆け上がる。
信長様の目は穏やかにを見下ろし続けていて、一瞬たりとも俺には向けられていない。
だが……『の為に用意したもう一本の一物』
それは確実に俺の事だ。
俺の存在など、只の道具に過ぎぬと言うのだな。
ああ、何と清々しい気分なのだ。
以前、俺自身すらが望んだ事ではないか。
を達かせる為ならば只の道具で構わない…と。
閨事についてだけでは無い。
信長様の天下取りの途筋でも俺は道具であるのだ。
なあ、これ程幸福な事があるか?
傾倒する主君が常に佩帯する道具…それが俺なのだから。
もう俺も信長様を見る事もせず徐に着衣を脱ぎ捨てると、既に最大に膨張しひくついている一物をの唇へ滑らせた。
そして、俺と信長様が同時に同じ言葉を囁く。
「さあ、好きにしろ……。」