第3章 花冷えの底/不破
「結局、登録の列に案内してくれた先生に男と間違えられて、くのたまにはなり損ねたけど」
「あははっ…ほんとうに忍たまになっちゃうなんてな!」
「そしてもう五年生だ」
入学のころから、たくさんのことがあったようで、なかったような、気もする。
学校や環境の変化、新しい戦術や武器。仲間内のケンカ、上級生との無謀なケンカ。動物だけでなく、身近なひとの死もあった。でも、ぼくら六人はそれぞれおかしな個性をもったまま、たがいに笑い飛ばし合って、いつの間にか高学年までおおきくなっていたのだ。
「なあ、忍たまでよかった?」
「…」
はこは答えず、しかし両の眼からは、じわじわと涙が浮き出た。
「兵助はその辺に放ってきた」
「?!」
はこのもとに屈んでいたぼくは立ち上がろうとするが、彼女は構わずつぶやきつづけ、ぼくはすこし腰を浮かせたまま、そのことばを聞いたのだ。
「兵助と……勘右ヱ門が、オレのこと、すきだって」
オレ、もう学園やめようかな―――――はこの声はうわずり、じぶんの手の甲を顔に当てて、声なくしゃくりあげはじめた。
☆
渚さんからのリクエスト内容がとてもしっかりしているので、これを1話めとして全4話程度のシリーズにする予定です
男装ヒロインで五年生のほぼ逆ハー、でも同性愛要素(竹鉢)を含むものになる予定なのでお気をつけください!