第8章 青い目の魚/沖田
はこはいう。
「そういう沖田クンは? わざわざどうしてこんな寂しいところへ来るんだよ」
「…」
余鈴が鳴り、スケ番のとなりから俺は立ち上がる。カンカンと、薄っぺらく軽い足音が、したまでつづく非常階段のあちこちから響いてきた。
「…でも俺は、ここを秘密にしておきてェ。だれにも来てほしくねェな。俺とあんただけで十分だろ」どうしてここに来るのか―――――わかりきった質問に、俺は答える。
「ま、たしかにキャパオーバーだな」
「そうじゃあねェ」
「ははっ、じゃあ告白かよ。ずっとふたりでいようネッてか」
俺は、階段の鉄柵に背をあずけて、古そうな文庫本を捲るはこの額を撫でた―――――文庫本はトルストイだそうだ。チェーホフももっているらしい。悲惨な話ばかりだが、優しいと、彼女はいう―――――。彼女の瞳に青空が流れている。
身を屈め、顕れたこめかみにキスすると、青空の瞳は「驚いたな」と嘯く。
☆
「そりゃそうか、すきじゃないなら、こんな狭いところで女子といっしょになんかいられない」
「ずっとデートのつもりだったんだけど」
「あはは、そりゃあおまえだけだぜ。わるいけどオレは沖田クンより風紀委員長のほうが好みだし」
「ウソだろ…副委員長のまちがいじゃなくて?」
「ああ。あのおっかなげなヤツじゃあねーよ。近藤のほう」
「こ、近藤さんは渡さねーー!!」
「ライバルかよwwww」
甘いマスクの風紀委員とワイルド女番長のツーショットでした。
たなはおりょうと花子のリーダーです。阿音百音とも仲良し。このあと担任となんやかんやあって3Z送りとなり、ぶっ飛んだヤツらと触れ合うなかで秘密の読書を堂々とひとまえでやれるようになるんだとおもいます。