第21章 Starting Over/ky
だからと言って、話を聞かない訳にもいかず…
「ん、で?何でしょーか?」
若干ヤケになりながら、目の前のテーブルに置いていた開けたばかりの缶チューハイを一口流し込んだ
「…俺さ、つばさといるのすげえ楽しいんだわ」
…なんでそういうことを言うかなぁ
普通に嬉しいんだけど
ふーん、とだけ興味なさそうに返事をしてみる
「あん時、つばさが酔ってキスするようなヤツだと思って、あんな反応しちゃったんだけどさ…
そんなことでお前のこと嫌になった訳じゃないし、なんつーか…これからもお前とこうして一緒いたいんだよね」
だからさ、と続けるその言葉の先を期待して
またドキドキと胸の鼓動が激しくなる
加えて体がなんだか熱い
熱を逃したくて、目の前の冷えた缶を握り締める
今度こそ期待してもいい、よね…?
「だからさ…
アレなかったことにしよう」
ベキィッッッ!!!
部屋に響くは缶の潰れる音
ああああそう言うことですか
つまりは友達宣言ってことね
もう嫌だ恥ずか死ぬ!!
ここまでくると泣きたい気持ちより、なんかもう笑えてくる
完全脈ナシかーい!
「うん、うん…わかった、りょーかい。
ごめんね、私もキスなんかしちゃったりして…」
無理矢理に作った笑顔を向けた時
思っていたよりもキヨが近くて
近すぎてキヨの前髪が私の顔に触れそう
そう思った時には唇に柔らかい感触があった
押し付けるように触れたかと思うと、温もりを感じる間もなく遠ざかる
今、キス、した…?
「ふぇ…?」
「何その反応」
目の前には真っ赤になったキヨが、視線を彷徨わせている
どうしよう
意味がわからない
混乱気味の私にキヨはさらに意味不明なことを畳み掛ける
「今のが俺たちのはじめてってことで」