第21章 Starting Over/ky
かあっと顔が赤くなるのがわかった
悔しいけど、これが惚れた弱味なんだと痛感する
返す言葉がない私は俯くしかなくて
キヨは残った缶ビールを一気に飲み干すと、私の方へ身を乗り出してくる
顔を上げると視線の先には頰が赤く染まった想い人
段々近くなる熱の篭った瞳に、胸がきゅうっと反応する
「もう我慢しないからな…」
軽く頷いてみせると、キヨは少しだけ笑って更に顔を寄せる
缶ビール一本が起爆剤になったのか、さっきより大胆で
お酒で勢いをつけちゃうのはキヨも私も同じなのかも…
頭の端でそんなことを考えながら、目をつむる
柔らかい感触が伝わると、唇が挟み込まれるように重ねられた
ちゅうっと音がなると、角度を変えてもう一度、もう一度
「…好きだよ、つばさ…」
離された隙間から呟くように漏れた言葉に、今度は私からキスをする
啄ばむような行為を繰り返すと、少し開いた口から遠慮がちに暖かいものが入ってくる
舌に残る苦いビールの味
それさえも甘くさせるキヨのキス
「ん…はぁ……っ」
呼吸をするために開いた口からは甘ったるい声が漏れる
自分でさえ知らない部分を暴かれていくようで、背中がゾクリと震えた
もっと欲しいのは私だけじゃない筈
強請るようにキヨの服の胸元をぎゅっと掴むと、後頭部に手が回される
同時に激しくなっていくキヨの動き
本当はこんなに求めていたなんて
始まってしまえば拘りもしがらみも関係ない
だからね、もうぶっ壊そう
「…つばさ、俺と付き合お?」
「…それって、酔っ払ったから言ってるの?」
「バカ、酔ってねえし…真面目に言ってんだよ」
「嘘だよ。あの時の仕返し!」
額をくっつけて笑い合う
こんなハッピーエンドがあるなんて
目を閉じるとまた降ってくる幸せ
キスで友情を壊したなら
キスで新しい関係を始めよう