第20章 臆病な君と恋がしたい/uszw
思いも寄らない牛先輩からのキス
二度目の口付けは、時が止まったのかと錯覚してしまうほど長く感じて
今度は私が驚く番
ゆっくりと離されると、少し頰が赤くなった牛先輩と目が合う
「待って。
キスも告白も女の子にさせて、俺すげえカッコ悪ぃじゃん。
せめてそれ、俺から言わせて?」
思考が完全に停止してしまった私は、コクコクとただ大きく頷くだけ
牛先輩はふぅっと息を吐いて姿勢を正すと、再び指を絡めてくる
ドキドキと早鐘を打つ心臓が、なぜだか心地良い
緊張した様子で私を見つめるその瞳から、今度は目が離せない
「…俺は、つばさが好きだ。
後輩じゃなくて、女の子として。
だから…彼女になってもらえますか?」
はっきりとそう告げた先輩は、臆病なんかじゃない、男らしくてかっこよくて
私の大好きな憧れの人のまま
どう抑えつけたって逃げたって
この想いは誤魔化せない
同じ気持ちでいてくれるのなら
私からもちゃんと気持ちを伝えたい
目の奥が熱くなるのを堪えて、私なりの精一杯の告白を
「私も、牛先輩が好きです。
『後輩』じゃ嫌です。
先輩の彼女になりたいです…!」
「…っ…つばさ…
…ありがとな。
つばさのこと大事にするから」
はい、と返事をすると牛先輩が照れたように笑う
その笑顔に安心したのか、無意識に強張っていた体から力が抜ける
同時にぽろっと零れ落ちた涙
また心配させてしまう…!
慌てて手で押さえると、頭をポンポンと軽く撫でられる
わかってるから、と優しく微笑む牛先輩に、なぜか止まらない涙を浮かべて笑顔を見せた
「ふ…ほんとガッチ様様だな…」
「え?課長?」
「あ、いや、何でもない!」
頭上にあった手は頰へ
優しく笑う牛先輩の顔が近付くと、ゆっくりと目を閉じた
感じる熱に夢じゃないことを確かめて
甘いキスに酔いしれる
この先も不安になることがあるかもしれない
先輩を勘違いさせてしまうことがあるかもしれない
それでも私は先輩に恋をしていたい
臆病だって恋がしたい