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晴のち雨のちキス【実l況l者/短編集】

第20章 臆病な君と恋がしたい/uszw


言葉に詰まって、思わず顔を逸らす
牛先輩の視線が痛い

心配してくれてるんだ…
嬉しい…けど
これ以上近いと伝えそうになってしまう

うまく回らない頭で捻り出した苦し紛れの返答

「何でもないです!
埃が目に入っただけですよ!」

目を合わせないまま一気にまくし立てると、重なったままの手から逃れようと段ボールから手を離す

一瞬浮いた手は、牛先輩によって再び段ボールへ押し付けられる

それどころか一層力が込められた手は、指の間に絡まるように繋がれてしまう

「…っ…先輩、手…退けてくれますか?」

絞り出した言葉は弱々しくて
これが今出来る私の精一杯の強がり

でも牛先輩は微動だにせず無言のまま

手から伝わる温度が熱い
周りに聞こえてしまいそうなほどの心音が耳の中で反響する

身動きが取れず、ただ俯いて耐えていると、ようやく牛先輩が沈黙を破った

「あのさつばさ…?」

「は、はい…?」

「俺、迷惑だった?」

淋しそうに問うその声色

思わず見上げた先には、いつもとは違う顔

「俺さ、つばさをずっと後輩の一人だと思ってた。でも異動になってから半年間、つばさのことばっか考えてて…

気になるなら連絡すればいいのに、それすらもできないくらいビビってさ。

今日ここで会えて、あの頃みたいに頼ってくれるかなって期待して……でも俺のこと先輩としてしか見てないんだなってわかって。

今更気付くなんて、ほんとバカだし、
こんな臆病なのって情けなさすぎるよな。

かっこいい先輩でいたかったんだけど…ごめんな、もう迷惑かけないようにするから」

はは、と乾いた笑いを吐き出すと、強く握られた手が解放される

違う
待って
私は…!

言葉よりも先に伸びた手は、目の前にあったネクタイを掴む
思わずぐいっと引っ張ると、先輩が驚いた表情をしたまま、私の視界いっぱいに映る

「……っ!」

強引に引き寄せた顔から奪った口元
押し付けた唇を離すと、未だに目を丸くしたままの牛先輩がいて

もう今しかない
今、言わなきゃ…!

「私、先輩のことがっ…!」

好きです

その想いは声にはならず
呼吸と共に塞がれる


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