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晴のち雨のちキス【実l況l者/短編集】

第20章 臆病な君と恋がしたい/uszw


ガシっと頭を掴まれたと思うと、乱暴に髪を撫でられる

「うわぁ、な、なんですかっ!?」

「ほーんと、お前は」

見上げる先にある牛先輩の優しい顔
髪に触れた手と同じくらいあたたかい

「もっと人を頼れよ。部署が別でも先輩なのは変わらないんだからさ」

一緒に働いていた頃と何も変わらない
気さくで、優しくて、大きな存在
先輩はやっぱり『先輩』のままなんだ


「……じゃあ、お願いします」

「ん。よし、やるか!」

そう言ってYシャツの袖を捲ると、段ボールに手を掛ける牛先輩

重っ、と声を上げながらも次々に移動していく

…よし!私も頑張ろう!!
今はとにかくファイルを見つけないと

同じように腕捲りをして、牛先輩が降ろしてくれた段ボールを開けた

………ん?
あれ?
これって…

「牛先輩っ!ありましたぁ!!」

まさかの一個目で発見とは!

段ボールを移動していた牛先輩に見えるように、頭上に掲げてみる

「え、もうあった?」

思ったよりも早く探し出せたことに驚いている様子の先輩

良かった
こんなに早く見つかるなんて
私もビックリしたけど
これで先輩を残業させなくて済む

「ほんっとにありがとうございました!
あとはもう大丈夫ですから!」

「あー…じゃあこれ適当に積み上げとくわ」

と、たった今降ろしたばかりの段ボールをまた元の位置に戻していく

なんだか無駄なことをさせてしまったような…

その姿を見つめながら、本当はもう少しだけ一緒にいたかった、なんて思ってしまう

心の奥で燃えるものがどうしたって消えてくれなくて
いっそのこと告白して玉砕してしまえばいいのに
臆病な私はそれさえもできない

行き場のない思いが溢れて、視界がじんわりと滲んでくる

なんでこんな時に…
泣き顔なんて見られたくない…

顔を見られないように俯いたまま、最後に一つ残った段ボールの両端に手を掛ける

腕に力を入れて持ち上げようとしたその時

私の手を包む大きな温もり

思わず顔を上げると、そこには牛先輩がいて

でもいつもの『先輩』じゃない、悲しそうな顔をした先輩

「つばさ…なんで泣いてんの?」


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