第14章 鍋奉行 牛様/uszw
気を取り直して、鍋に火をかける
まずは脂を…と
牛脂を鍋に入れ、溶けてきたところで牛肉投入
肉の色が変わってきたら、すき焼きの素を…
………
………
………視線がすごいっっ!!!
食い入るように鍋を見つめる牛沢さん
ちゃんと瞬きしてますか?!
しかも若干湯気でメガネ曇ってますけど!
「えっと…、じゃあ野菜、入れよかな。」
と、野菜が入ったお皿に手を伸ばすと
「待てぃ!!!」
「っ!!!!!」
ビックリしてお皿を落としそうになった
突然のキャラ変?!!
「まずはこの状態で肉だけ味わうと美味いんだよ。」
そう言って鍋に箸を伸ばす
うっしーの器には既に卵が割られていて、準備万端だ
「つばさも食ってみ?」
「う、うん…。」
うっしーは大きな口で頬張ると、今日イチ幸せそうな顔をする
さっきの鍋を睨んでいたのは気のせい…にしたいほどのギャップ
その様子を見てると早く食べたくなって卵を器に割る
数回かき混ぜた後、鍋からお肉を一枚掬い上げた
溶き卵に浸されたお肉が食欲をそそる
湯気の向こう側から感じる圧に若干ドキドキしながら、口へ運ぶと
「んー!おいひいー!」
「だろ?肉だけの旨味がわかるだろ?」
すんごい得意げな表情
「すごいね、うっしー!
詳しいんだねぇ。」
「いやいや、全然。
料理とかそこまでできないし。」
なんて言いながらも、褒められてちょっと照れてる
…うん、耳赤くなってて可愛いけど
その謙遜は逆に怖いからね
それからまたお肉を食べて、いよいよ野菜投入
なんかビクビクしてるよ、私
でも野菜入れるだけだから!
きっと大丈夫!
お皿を手にして半量ほど、鍋に入れる
ちらっとうっしーを見ると、美味しそうに食べてる姿
安心したのも束の間
「…あ、あああああっっっ!!!」
「ひゃうっ!!」
うっしーは物凄い速さで鍋に箸を突っ込むと、物凄い手際で肉と白滝を分別してる
「これ!一緒にしたら肉が硬くなるから!」
…こんなうっしーは見たことがない
己の信念を貫き通す強い意志
間違いは見逃さない鋭い瞳
右から左へと動く素早い手さばき
額にうっすら滲む汗
うっしー
いや、牛様…
まさかあなたが鍋奉行様だったとは…
これ以上の失態は、切腹モノでしょうか…
頭に見えるちょんまげは幻でしょうか……