第14章 鍋奉行 牛様/uszw
今日はうっしーがウチに遊びにくる!
付き合ってから来るのは初めて
ちゃんとおもてなしして、女としての株を上げるぞ!
まずはリビングで待つうっしーに缶ビールと事前に作っておいたおつまみを渡す
「おぉ、サンキュー。
つばさは気がきくね。」
優しく笑うその表情に、キュンとなる
あぁその笑顔が大好き…
おつまみも美味しいと食べてくれて、なんだか幸先いい感じ
「あ、今日はね、すき焼きにしようと思ってるんだ。」
目の前のテーブルに準備した材料に視線を移すと、うっしーもつられてそちらを見る
「マジで!俺、大好物。」
少年のようにキラキラした目で嬉しそうにしている様子に、またキュンとなる
正直、私はそれほど料理が得意じゃない
下手とか不味いとかってわけではないけれど、自慢できるほどのレパートリーもないし
でも鍋なら大体は美味しいし、ほら今は鍋の素ってあるしね
鍋に火をかけようと卓上コンロに手を伸ばした時、材料を見ていたうっしーの様子がおかしい
野菜を盛っているお皿をじっと見つめているようだ
「…なぁつばさ…?」
急に神妙な面持ちで私の方を向く
「どうしたの…?」
レンズの奥の眼が怖い
心臓がバクバクしてくる
野菜に虫でも付いてた…?
「あのさ…
白菜、入れるの…?」
「え、え?…白菜?」
思わず間抜けな声が出た
うっしーは野菜の中から白菜を指差し、眉間に皺を寄せて私に問いかける
何だろう、この尋常じゃない空気は…
「えっと…あ、嫌いだった?」
まさかの白菜嫌い?!
彼氏の好き嫌いを把握してなかったなんて…!
パニックになりそうな頭を落ち着かせつつ、なるべく笑顔で聞いてみる
「いや、嫌いじゃないんだけど、
白菜入れると水っぽくなっちゃうから、入れない方がいいんだけどね。」
「へ…、あ、あーじゃあ外しとくね!」
私はテーブルから野菜のお皿を取ると、キッチンへ猛ダッシュした
え、何?!
白菜であんな顔するの?!
今日ほど白菜をこんなに恨めしいと思ったことはないよ!
白菜を抜き取ると、うっしーのいるリビングへ戻る
「お待たせー!ごめんねー!
じゃあ早速準備するね!」
平静を装い、テーブルに着いた