第1章 明日に向かって N×S
「お願い?」
「うん。ポストのとこで会えた時はさ、その…2階までね、一緒に階段を上りたいなぁ…なんて…」
「えっ…?」
「少しでも長くいたいでしょ…好きな人とはさ…」
うわぁ、言っちゃったよ…
心臓はバクバクだし顔は火照って熱い。
「カズさん!」
「うわっ」
翔ちゃんに勢いよく抱きつかれた。
そりゃあね、嬉しいよ。
嬉しいんだけど…
「翔ちゃん…帽子が顔に当たってるってば…」
何度か訴えたけど翔ちゃんは僕をギュウギュウするのに夢中なのか、聞こえていないようで…
「こら、翔!帽子取れや!」
「えっ…カズさん…?」
クククッ…
今度は翔ちゃんが固まったんだ。
目の前でキョトンとする翔ちゃんの緑の帽子と僕の赤い帽子を取る。
おっきな瞳をパチクリさせている翔ちゃん。
「好きですよ、翔ちゃん」
僕は翔ちゃんの頬を包んで、赤いぷっくりした唇にちゅっ。とキスをした。
「あっ、あれ?俺…」
「何ですか?翔ちゃん」
「俺、カズさんと両思い…」
「そうですよ?翔ちゃん」
僕は帽子の跡が付いている翔ちゃんの明るい色の髪をゆっくり撫でた。
気持ちよさそうに柔かな表情をする翔ちゃん。
例えでいうなら…小動物っぽい、かな。