第1章 明日に向かって N×S
…さん…カズさん…
なんか…呼ばれてる?
「おい、こら、カズ!」
「はいっ!」
「あはは。やっと気づいてくれた〜」
さっきから、色んなことにびっくりしっぱなしなんですけど…。
「…ん?あれ…?」
違和感があって、鼻と口元を手で触れてみたけど…無い…。
ローテーブルに視線を向けると、僕と翔ちゃんの付け鼻と髭が置いてあった。
いくら呼んでも僕に気づいてもらえず、鼻と髭を外してみたら途中で気づくんじゃないかと思ったらしい。
「全然気づかなかった…」
「え〜っ、だったら…ちゅーしちゃえば良かったなぁ、失敗したぁ…」
「…ちゅー?」
ドキン…として、やっぱり現実なんだと思った。
「カズさんの泳ぐ瞳って、クゥ〜ンって鳴き声と垂れた耳が見えてくるような…それが可愛くてたまらない」
翔ちゃんの手が僕の頬に触れて、体がビクッとする。
だけど…
「それって…犬みたいでってこと…?」
ひねくれてるよな、僕は。
「あはっ。違いますよ、あくまでも例えであって…そんなカズさんが…好きってこと」
「翔ちゃん…」
僕も、目の前にいる翔ちゃんの頬に手を伸ばした。
ほら、翔ちゃんだって頬を赤らめて可愛いじゃん。
「1つお願いがあるんだけどね…」