第13章 Happiness N×M
潤くんが立ち上がり、向かいに座っている僕のそばに来た。
僕も立ち上がったほうかいいのかなと思い、椅子の向きを変えつつ肘掛けに手をかけると
「ニノ、俺…」
おぉっと…
潤くんが話し始め、立ち上がるタイミングを逃した僕は、少し浮かしていたお尻を再び椅子の座面に下ろした。
座ったまま潤くんを見上げると、意を決したような男らしい表情をしていてキュンとなる。
「俺さ、ニノのこと…」
「う、うん」
その先の言葉がやっと聞ける。
ドキンドキンが最高潮に近づいてきた。
潤くん、早くっ。
早く聞かせてっ。
「ニノのこと…」
ゴクリ…。
「その…」
「う、うん」
「す、「ににょ~」…」
潤くんの言葉にかぶるように、翔ちゃんの声が徐々に大きく聞こえてくる。
潤くんの足の横から翔ちゃんがすり抜けてきて、僕に勢いよく飛びついた。
僕もビックリしたけど、潤くんもポカーンとしていて。
だけど、ちゃんとね、
潤くんが“す”の後に“き”って言ってくれてたのも、僕の耳にはしっかりと届いたから。
今ね、心がほわっとあったかいよ。
「あはは。翔ちゃん、どうしたの?」
僕のお腹にぎゅって抱きついたままの翔ちゃんに声をかけてみる。
「あにょねー、アメどーじょ」
腕を解いた翔ちゃんの手には、アメ玉が2つ握られていて。
僕には紫色の、潤くんには黄色の包み紙のアメ玉をくれた。