第13章 Happiness N×M
「今日はありがとな。帰り気をつけて」
靴を履く僕に、潤くんが声をかけてくれた。
「うん」
潤くんの気持ちを知ったからかな。
いつもと同じシチュエーションだけど、いつもとは何かが違う。
潤くんね、僕のことが好きなんだって。
つい口角が上がりそうになるのを、緩く巻いたマフラーで隠した。
「明日、また学校でな」
「うん」
ニノの気持ちは?って聞かれるんじゃないかって内心はドキドキしてたけど、最後まで聞かれなくて。
多分だけど…
潤くんは“すき”って言ったのが、僕に聞こえてなかったって思っているんだと思う。
まぁ、ね。
暫くはさ、僕の心の中に秘めておきましょうかね。
「寒っ」
外はもう真っ暗で、頬に当たる風も冷たい。
緩く巻いていたマフラーをぐるぐるっと巻き直した僕は、手袋をはめようとポケットの中に手を入れた。
指先に当たるのは、さっき翔ちゃんがくれたアメ玉。
ふと、いつだったか翔ちゃんが言ってたことを思い出す。
“じゅんにーはむらさちで、ににょはーきーろ”
どうやら翔ちゃんの中では、潤くんは紫色のイメージで、僕は黄色のイメージがあるらしい。
でもいま、僕の手の中にあるアメ玉は紫色のもの。
イメージとは違う色…。
あ、そうか。
紫色は、僕が好きな潤くんの色。
だから、翔ちゃんは僕に紫色をくれたのかもしれない。
『明日、ちゃんと返事聞かせろよ』
僕が気持ちよ~く眠っている間に、潤くんからそんなラインが入ってたなんて。
わかりましたよ、ちゃんと伝えますよ。
潤くんよりも男らしく、はっきり言いますよ。
『あなたのことが~好きだから~』って。
今よりも、も~っと惚れさせてやるからな。
待ってろよ、潤くん!
END