第13章 Happiness N×M
僕の頬に触れてる温もりは、翔ちゃんのではない。
だって、翔ちゃんの両手はまたパズルを持ってるし。
「潤…くん?」
「ニノ、顔真っ赤だよ。可愛い」
か、か、可愛いってなんだよ…。
「ほら、また赤くなった」
僕はこんなにドキドキしてるのに、潤くんはどうしてそんなに楽しそうなの?
どうして僕の頬に触れてるのか、聞きたいけど聞けなくて。
潤くんの手が触れてるところに、神経が集中していくようだ。
「ただいま~」
玄関からイケメン兄弟の母の声がして、潤くんの手が僕の頬から離れた。
ホッとしたような、さみしいような。
潤くんとチラッと目が合うと、照れたような表情をしていて。
そんな顔されたら、僕だってもっと照れるよ。
「おかえり~っていってくる~」
椅子から降りた翔ちゃんが、パタパタと玄関のほうに走っていく。
あっ…
翔ちゃん、行っちゃうの?
この状況で潤くんと2人きりは、非常に気まづいんだけど。
翔ちゃん、カムバ~ック!
僕の心の叫びは、その小さな背中に届くはずもなく。
潤くんは僕に視線を向けたままだし。
どうしたらいいかわからなくて、僕は咄嗟に俯いた。
「なぁ、ニノ。こっち向いて?」
潤くんの優しい声が聞こえてくる。
まるで翔ちゃんに話しかけてる時のような甘い声が、今…僕だけに向けられていて。
「な、なに?」
言葉は素直じゃないけど、僕は嬉しくてたまらなかった。