第13章 Happiness N×M
「もうさ。母さん、どうして翔をおいていくかな…」
潤くんがシャーペンの先をノートにトントンとしながら呟く。
夕方のこの時間は近所のスーパーでタイムセールがあるから、イケメン兄弟の母は留守にしてることが多い。
「仕方ないんじゃない?翔ちゃん、まだ小さいからさ」
僕たちが自分の話をしてることがわかったのか、翔ちゃんがパズルをしていた手を止めた。
そのことに潤くんも気づいたらしい。
「ん?翔、何か言いたいの?」
さっきまでちょっぴりイライラしてる雰囲気だった潤くんが、翔ちゃんに優しく話しかける。
相手は僕じゃないのに…甘さを含むその声に胸がキュンとするんだ。
「翔、まいごなるってー。じゅんにーとおウチいてってー」
「そっかぁ」
「翔ちゃん、ちゃんとお母さんから言われたことわかってるんだね」
「そりゃあ、俺と似て賢いもんな~翔は」
ホント、ブラコンなんだから。
潤くんに頭をポンポンされて、翔ちゃんも嬉しそうにニコニコしている。
いいなぁ…
潤くんからの頭ポンポン。
僕もあの大きな手で触れてほしい…。
「ニノ?」
潤くんから声がかかり、我にかえった。
「じゃあ、数学はもう教えなくてもいいよね?」
「いやいや。それは困るよぉ、ニノ様~」
「ににょちゃま~」
「はいはい、わかったから。続きしましょうかね」
あーあ。
翔ちゃんがうらやましいよ。
僕の恋は…
進展していくのかな…。