第8章 素晴らしき世界 M×N
頬を紅く染めたニノが手で顔を覆ってしまった。
「ニノ?」
「全く…あなたって人は」
「でもさ“察して”って先に言ったの、ニノだよね?」
「はぁ…そうでしたね。参ったな、こりゃ」
そして今度はこめかみ辺りをこすりはじめた。
仕草がいちいち可愛いすぎるんだよ。
今度、直接言ってみたい。
「いいよね、ここの景色。潤くんもそう思う?」
「うん、思う。部活はないけどさ、この景色は見たくて。向こうの駅まで歩くことにしたんだ」
「でもさ、テスト勉強する時間が減らない?」
「それは大丈夫。俺、結構成績いいから」
「あらあら。イケメンで頭もいいなんてね」
ふんっと俺から視線をそらす。
本当に可愛いやつ。
「ニノがいたらいいなって、ちょっとワクワクしてた」
「えっ…」
「もしいたらさ。ゴムボール転がして、偶然を装って話しかけてみようかな、なんて思ってた」
「そんなこと考えてたの?」
「うん。いつもより早い時間なのにニノがいたからさ。もう嬉しくて嬉しくて」
興奮気味に話す俺。
ニノは拳を口にあてて、くくくっと笑い始めた。
「結果的に俺から話しかけたけどね。あのイケメン何してんの?って思ったもん」
「ボールがさ、思ってたところと違うとこに転がるんだよ。ニノに引かれなくて良かったけど」
そう言うと、ニノが俺の横に置いていたゴムボールを手に取った。
「ニノ?」
「…違う意味で惹かれましたけどね、潤くんに」