第8章 素晴らしき世界 M×N
俺まで目の奥に熱いものが込み上げてきそうになった。
ニノは、そんな思いを抱えて土手にいたのか。
何か言おうとしても、どう声をかけたらいいのかわからない。
俺は手を伸ばして、ニノの頭をポンポンした。
そうして暫く沈黙の時間が流れた。
「俺さ、2ヶ月くらい前からニノの存在に気づいてたよ」
「素敵な人がいるって、見とれてたんじゃないでしょうね…」
「うん。気になって視線はチラッと向けてた」
「はぁ、もう。ちゃんと練習に集中しなさいよ」
「うん。わかってる」
「本当かねぇ」
顔を見合わせ、ふふっと笑いあう。
「ニノだって、ランニングしてる中に俺がいること知ってたんじゃないの〜?」
「まぁ…そうですよ。顔の濃いイケメンさんは目立ちますから」
「そんなに濃いかなぁ」
「えぇ。自覚してください」
ニノがイタズラっぽく笑った。
「そういえば、潤くん今日部活は?」
「あぁ。テスト期間で休み」
「ふーん…。で?」
「…で?って何?」
「部活ない。テスト期間。潤くんは何でここにいるの?家、近いの?」
「いや…近くはない」
「じゃあどうして?」
「ニノこそ…察してよ」
俺はニノを見つめた。