第1章 明日に向かって N×S
「カズさんは明日は休みですか?」
「うん、土日は基本的に休み」
「あの…ゲーム教えてもらいたいんですけど…」
「あ、うん。いいよ」
「やったぁ!」
あどけなくて可愛いな、翔ちゃん。
「明日待ってますね」
アドレスを交換した後、翔ちゃんはまたもや階段を駆け上がっていった。
5階建てだから、エレベーターは設置されていない。
「2階までは一緒なんだけどな…」
ちょっぴりさみしく思う。
翌朝…
「4階が遠く感じるなぁ。少し運動しないとダメだなぁ」
息を切らせながら、目的地のである401号室に辿り着く。
ピンポーン
チャイムを鳴らすとすぐにドアが開いた。
「カズさん、おはようございます!」
爽やかな声で僕を出迎えてくれたのは美人な男ではなく…いや、素は美人な男なんだけど。
「…えっ。あ、あのさ…、ハロウィンはまだ先だよね…」
「そうですよ、まだ先です」
緑の帽子と服にオーバーオール、お髭姿のあの有名キャラクターの格好をした翔ちゃん。
「おかしいですか?」
「いや、おかしくない」
正直びっくりして、それしか言えなかった。
「カズさん、早く入って入って」
そしてやたらと嬉しそうなんだ。
案内されたソファーには、色違いの赤いほうが置かれている。
お髭と付け鼻までご丁寧に…。
「まさか、これ着るの?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
しまった…
手渡されて、思わずお礼を言っちゃったよ。
ゲームは大好きだけど…
そのキャラクターのコスプレをしてゲームをしたことなんて、今まで一度もなくて。
「カズさん、すごくいい!似合います!」
そう言われて嬉しく思う自分が、何だか照れくさかった。