第5章 STAY GOLD M×S
何分くらいそうしていただろう。
ここがカラオケの個室で良かったと思う。
俺はサクショウの体を抱きしめていた腕をほどいた。
「ごめん、ありがと…」
「ううん、気にしないで」
お互いにジュースを飲む音だけが聞こえる。
「あのさ…」
「ん?」
「俺の親さ、会社を経営してるんだ。それでさ、ライバル会社の息子と俺が仲良くするのが嫌みたいで。困っちゃうよね」
「マツジュン…」
できるだけ明るい声色で話そうとしたけど、語尾が小さくなってしまった。
それを聞いていたサクショウの声も悲しげで。
二人とも俯き、しばらく沈黙が流れた。
「サクショウのとこは…どう?」
「ウチ?ウチは友達付き合いに関しては何も言われないけど…逆にどう思ってるのかわからないって感じかな」
「そっか…」
「ねぇ…マツジュンがさっき言ってたライバル会社の息子って…」
サクショウが伺うようにして俺を見る。
「いや、何でもないから気にしないで」
「だけど…」
「ごめん、本当に変なこと言って」
「だって…もしそれが僕だったとしたら…」
「サクショウ…」
「僕たちが仲良くするの、マツジュンの家族は嫌なんでしょ」
「だけど、それは周りが言ってることで…俺の意思じゃないから」
「マツジュン…」
「俺たちはこれからも変わらずさ、仲良くしていこうよ…ねっ?」
「うん、僕もそうしたい」
「じゃあ…これからもよろしく」
「うん、こちらこそ」
姉ちゃん、ごめん。
俺たちは固く握手を交わしたんだ。