第5章 STAY GOLD M×S
式が終わり、教室に戻る。
まさか惹かれた相手が『櫻井翔』本人だったなんて。
ずっと気になっていた人のことがやっと知れたのに。
いいなって胸が弾む相手を見つけたのに。
ライバルなんだと言い聞かされてきただけに、戸惑う自分がいる。
「あ、今朝の…」
そんな俺の気持ちを知らないであろうキミは、スーっと心に入ってきてしまうんだ。
「あの時は、心配してくれてありがとう」
目の前で立ち止まったキミに、そう返事をした。
「ずっと気になってたんだ、大丈夫かなって」
「ずっと?」
「うん。キミをそのままにして行っちゃったから…。あ、僕は櫻井翔っていいます。よろしくね」
爽やかな笑顔に気持ちが和らぐ。
「俺は松本潤です、よろしく」
会社がライバルだとしても、俺はキミと…櫻井翔くんと仲良くしたい。
その気持ちのほうが強かった。
「サクショウはさ、どっちで食べる?」
「うーん…今日は天気がいいから外かなぁ。マツジュンは?」
「うん、俺も外がいいって思ってた」
「じゃ、行こうか」
「おう」
俺たちは気が合い、学校では一緒に過ごすことが多かった。
共通の趣味も多く、休みの日には映画を観たりショッピングに行ったりもしていた。
俺にとって、いま一番大切な人。
だけど。
「あの子はライバルなのに」
親からそう咎められることも多くなり、家庭の雰囲気はいいとは言えなくなってしまった。
何よりも、
「あんたのせいで」
姉の言葉が胸に刺さったんだ。
前から約束してたカラオケに来たものの、歌う気にはなれない。
「マツジュン、どうしたの?何かあった?」
キミの優しい声が、じんわりと染みてくる。
俺はキミを抱きしめた。
「マツジュン…?」
「サクショウ、しばらくこのままでいさせて」
俺は胸のうちをキミに話そうかどうか迷っていた。