第3章 アオゾラペダル N×O
そうして迎えた体育祭。
「もう。二ノだめじゃん」
大野さんが珍しく、俺にお小言を吐いている。
スニーカーソックスを履いてきたことを怒っているようだ。
「この前さ、足首が赤くなっちゃってたでしょ」
「別に痛くなかったから大丈夫ですよ?」
「またそんなことを言って…」
あ…まずいな。
ちょっと機嫌がよくなさそうだ。
「あなたにまた心配して欲しかっただけです」
俺は正直に言ってみた。
「ば…ばかじゃないの。心配してやんないから」
大野さんはプイッとそっぽを向いてしまった。
…耳は赤いけどね。
櫻井先生が心配そうにこっちを見ている。
俺は大丈夫だよの意味を込めてニコッとすると、櫻井先生もニコッて微笑み返してくれた。
二人三脚に参加する選手たちの招集アナウンスが流れた。
集合場所に向かう途中でも、大野さんは目を合わせてくれない。
クラスメイトたちからは「頑張れ〜」って声援が聞こえてくる。
フゥ…
俺は深呼吸をした。
「大野さん。高校最後の体育祭ですよ。櫻井先生も勝つために俺たちを選んだって言ってました。クラスメイトたちも応援してくれてます。もしやる気がないなら、やめましょ。やる気があるなら頑張りましょ」
俺がそう言うと、
「やる。だけど、二ノはこれに履き替えて」
大野さんがズボンのポケットから、ハイソックスを取り出した。
「えっ…これ?長すぎません?」
「長いままじゃないよ。真ん中辺りで折り返して履くの。二重になるだろ。こんな風に」
大野さんが自分のズボンの裾を捲って見せてきた。
なるほどな…
「あなたなりに、やる気マンマンだったんですね」
「そうだよ。心配して欲しかったなんてふざけたこと言ってないで、さっさと履き替えてよ」
「ありがとうございます…さっきはごめんなさい」
「ふふっ。頑張ろうな」
今回は俺が悪かったなって思う。
靴下を用意してくれてたり、笑顔が見れて…すごくホッとしたんだ。