第3章 アオゾラペダル N×O
体育祭まであと3日となった日の夕方。
近所に住んでいる、面倒見のよいお兄さんがウチにやって来た。
その人は俺が中学の時に、悩みを聞いてくれた相手だ。
「最近はどう?」
「どうもこうも…わざと俺たちを選出したでしょ」
「何が?」
「とぼけちゃって。大野さんとの二人三脚ですよ…櫻井先生」
「やだなぁ、プライベートなんだからさぁ。櫻井先生なんてやめてよ」
「じゃあ…翔ちゃん」
「ふふっ。よろしい」
櫻井先生…翔ちゃんは、俺たちの7歳上で近所に住んでいる。
ウチとは親同士が知り合いで、家族ぐるみの付き合いだ。
そんな翔ちゃんは昔から、俺の良き相談相手。
賢かった翔ちゃんは、夢を叶えて教師になった。
去年ウチの学校に赴任してきて、今年まさか俺たちの担任になるなんてびっくりだったけど。
「二ノさ、すごい楽しそうだなって」
「そりゃあ楽しいですよ」
「ペアが大野だもんな」
「あなたが決めたペアですけどね」
「まぁね。担任の特権かな。勝つためのね」
「…それだけじゃないくせに」
「そう?二ノがそう思うなら、そうなんだろうな」
ベッドに腰かけている翔ちゃんが、後ろに手をつきながら長い脚を組み直した。
「ありがと…翔ちゃん」
「うん、頑張って」
イケメンはどこまでもイケメンなんだから。
本当に…チャンスをくれてありがとう。