第3章 アオゾラペダル N×O
「怒られちゃったね」
肩を竦める大野さん。
そんな仕草にも、俺はドキドキする。
「さぁ、練習しましょ」
俺が大野さんの肩に手を回すと、大野さんも同じように俺の肩に手を回した。
「1、2、1、2…」
俺たちの息はピッタリだ。
そんなにやる気があるわけじゃないけど…うまくいくのはやっぱり気分がいい。
「おいらたち、うまいね」
「そりゃそうでしょうよ。仲良し歴10年ですよ?」
「もうそんなになるのか…」
そう、もう10年になるんだ。
足首に結んだ紐をときながら思いにふけっていると
「二ノ…」
不意に大野さんの指が俺の足首に触れた。
「えっ…?」
「赤くなってる…痛い?」
俺はスニーカーソックスだったから、摩擦でうっすら赤くなっていた。
「足首は…痛くない」
「ほかにどこか痛むの?」
しゃがみながら、俺を見上げる大野さん。
手を伸ばして抱きしめたくなる…
「いいえ、大丈夫ですよ?」
俺はその手で大野さんの髪の毛をクシャッとした。
俺と大野さんは小2の時にクラスメイトになった。
お互いはしゃぐほうではなかったし、1人でいるほうが好きで…そんなところが意気投合したんだ。
何となく一緒にいて、笑いあったり擽りあったり。
友達というより兄弟みたいな感覚だったと思う。
小学生の時は、周りからは当たり前の光景だったんだろう。
とやかく言う人もいなかった。
だけど…
“お前らできてるの?”
“男同士で仲良すぎない?”
そう言われるようになったのは中学に入ってからだった。