rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第35章 the price of choice
「ッ……」
ナッシュによる姦通には気付いてくれないくせに。
目の色が変わったと同時、名無しはシルバーの態度に少しぴりぴりとしたそれが纏ったことを察した。
一寸の片言めいた単語で理解していた彼の眉間には皺が寄り、不機嫌になったというよりは、何か企んでいるかのような表情に変化していたのだ。
名無しの胸に過ぎる不安。
手のひらには、じんわりと汗が滲んだ。
「時々今でも見返しては、今のおまえと比べて楽しんでるぜ…?それがどうかしたのかよ」
「ッ……消し……」
「あァ?」
「…っ……お願いだから…いまの……今の私を撮っていいから…昔のはもう……見ないでください…おねがい……」
「……アーーー…そういうことかよ…」
どう言えば納得してもらえるかなんて分からない。
到底無理なお願いごとに分類されるだろう。
名無しは自分なりに条件を出しながら提案したけれど、薄っぺらいそれに対し、シルバーが首を縦に振る筈もなかった。
「おまえちゃんと聞いてたか?見比べてるつってるだろうが……オレには最高なんだよ、どっちも」
「っ……でも…」
「なんだよ」
「…昔の……あのときのわたしは…ほんとに嫌がって……」
「だからそれがいんだろうがよ…どっちも最高だっつって今言ったろ」
「ッ……むかしの…」
「あァ?」
「――……むかしの自分に…嫉妬しそうで…嫌だから……それでもだめですか…」
「!」