rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第35章 the price of choice
「あの……これ。上手くできたか分からない…けど……はい」
「!……おまえ…」
「、……なに…?……ッ…」
「早速かよ……フッ、可愛いことしてくれやがる……オレは嬉しいぜ。おまえを手に入れられてよ」
「っ……」
名無しはシルバーが玄関口に来るといつものように扉のなかに引き摺り込まれ、閉じた戸の傍で早速キスを浴びた。
いつものよう……とは言いつつ、多少彼の態度は緩和されていた。
開いた扉から伸びていたシルバーの腕はそこまで強引じゃなかったし、掴まれた際の痛みも感じなかった。
そしてなにより、交わしたキスに熱情が込められており、再会を心より喜ばしく思っていたように見受けられたことが、名無しがそのとき頬を染めた遠因だった。
「……」
名無しはまるで土産を渡す様に、作った菓子の箱をすぐさまシルバーに手渡した。
子のように喜びを表情で見せてくる彼に、名無しは沸いた愛情を必死で胸の奥底へとしまい込む。
こんな付き合いは、更なる破滅への第一歩だ、きっと……。
たとえ違っても、シルバーのご機嫌取りのようなことをしている自分に、名無しが嫌悪感を持つのも無理はなかった。